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2006.12/21(Thu)

小説の中の着物 

明治~昭和に書かれた小説を読んでいると、着物について描写している箇所が結構多い。
着物のことを知らないとよくわからないので読み飛ばしてしまいがちだけど、今あらためて読み直してみると、“あ~なるほど・・・”とその情景がよりリアルに思い浮かべられたりする。

江戸川乱歩の『陰獣』の冒頭場面は、そんな中でも好きなシーンのひとつ。
主人公の“私”とヒロイン静子が、上野の帝室博物館で出会う。以下、ちょっと長いけど抜粋。

「博物館というものがどうしてこんなに不人気であるかと疑われるほど、そこには人の影がなかった。陳列棚の大きなガラスが冷たく光り、リノリウムには小さなほこりさえ落ちていなかった。お寺のお堂みたいに天井の高い建物は、まるで水の底ででもあるように、森閑と静まり返っていた。(中略) 
 私は何かしらゾッとして、前のガラスに映る人の影を見た。そこには、今の菩薩像と影を重ねて、黄八丈のような柄の袷を着た、品のいい丸髷姿の女が立っていた。(中略)
 この世に若し人魚というものがあるならば、きっとあの女のように優艶な肌を持っているにちがいない。どちらかといえば昔の瓜実顔で、眉も鼻も口も首筋も肩も、ことごとくの線が、優に弱々しく、なよなよとしていて、よく昔の小説家が形容したような、さわれば消えていくかと思われる風情であった。私は今でも、あの時の彼女のまつ毛の長い、夢見るようなまなざしを忘れることができない。」

水の底で人魚と出会うような、なんとも艶かしい出会い。でもこの上品な彼女には、実は秘密が・・・

「彼女の項(うなじ)には、おそらく背中の方まで深く、赤痣のようなミミズ脹れができていたのだ。それは生まれつきの痣のようにも見えたし、又、そうではなくて、最近できた傷痕のようにも思われた。青白い滑らかな皮膚の上に、格好のいいなよなよとした項の上に、赤黒い毛糸を這わせたように見えるそのミミズ脹れが、その残酷味が、不思議にもエロティックな感じを与えた。それを見ると、今まで夢のように思われた彼女の美しさが、俄かに生々しい現実味を伴なって、私に迫ってくるのであった。」

そう、この小説は「残酷色情」(SMですね)がキモになるお話なのです。
で、意外に思ったのが静子の着ている着物。これが黄八丈(風)なのだ!(黄八丈は、よく時代劇なんかに出てくる、黄色地に格子などのカジュアルな町娘みたいな着物。) 
なんとなくこの小説のイメージから考えると、もっとシックで高級な感じの着物、例えば大島とかそういう“大人のエロス”な着物だと思っていた。それに、映画やドラマだと現代風な味付けがされているけど、まだ日本髪を結ってる時代の話なのね、考えてみたら。
この黄八丈っていうのは、静子の若さを象徴してる着物なのかなぁ~と、あらためて読み直して考えてみたり。
昔は今と違って、年齢や身分によってする髪型や着物の着方などが決まっていたので、そこらへんの描写からも人物の造形や作者の意図が読み取れたりして、なかなか面白いものなのです。

鏡地獄―江戸川乱歩怪奇幻想傑作選 / 江戸川 乱歩
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